社会科学入門2025後期13公共哲学としての社会科学
これまでの流れ
総論編
研究方法編
実践編
実践編(1)論文作成のメソッド
研究方法編(5)を補充
研究方法(5)モデル分析と歴史分析
■モデルとは何か
経済学の基本モデル(『マンキュー入門経済学』第3版より)
■モデル分析とは何か
ワイスバーグによるとモデルには3種類ある。
(1)具象モデル(実物の縮小模型、モデル生物)
(2)数理モデル(解釈された数学的構造)
(3)数値計算モデル(計量モデル)
→シミュレーション(現実に起こりうることをなるべく)
理論モデルは変数を少なくし理想化することで現実からの乖離する。乖離することで思考を自由にできる。暫定的。役に立てばよし。
計量モデルと数理モデルの関係。
追加すると
(4)図表モデル
(5)言葉のモデル
■歴史分析
固有性と複雑性をそのままに。個性記述的。
時間の流れには逆らえない。
マックス・ウェーバー(ヴェーバー)
方法化の習慣、方法の自立、いったん事実から離れる。
遠近法や平均律のように。
ウェーバーの合理化論
そもそも近代西欧においてのみ生じた特殊なことがある。それは独特の〈合理化〉である。「西欧に特有の合理化」
ウェーバーは『宗教社会学論集』の有名な「序言」のなかで、つぎのように問うている。要約すると「なぜヨーロッパ以外の地では、科学・芸術・国家・経済の発展が、西欧に特有の合理化の道をたどらなかったのか」ウェーバーは、この西欧に特有な合理化」の結果生まれたものとして、つぎのようなものをあげている。
経済における資本主義的企業――形式的に自由な労働・合理的経営形態・家政と経営の分離・合理的な簿記
行政における官僚制組織
国家における議会制度・憲法・合理的法体系
学問における近代自然科学――数学的な表現と基礎づけ・実験による検証・組織的研究の場としての大学
芸術における市場向け生産物――文学出版物・雑誌・新聞・劇場・美術館
絵画における遠近法
音楽における和声音楽[対位法・和音和声法]
展望編
公共哲学としての社会科学
■何のための社会科学:
(1)人間社会の予測と管理のための分析(制度的世界)
(2)人間社会を理解するための解釈(生活世界)
(3)国際社会の予測と管理と理解のためのすべて(国際社会)
■人間の行為が社会を作る、それはどんな仕方で(マックス・ウェーバー)
(1)目的合理的行為(目的にふさわしい手段を使って他のことを考えない)
(2)価値合理的行為(予想される結果を無視して、義務・体面・美・教義・信頼を優先する)
(3)感情的行為
(4)伝統的行為
■西欧特有の合理化とその反発
目的合理的行為には計算可能性があるが他はそうでない。
客観性か解釈か
法則定立か個性記述か
価値中立か、共通善の実現に貢献できるか
不平等(格差)
合理化の波からこぼれ落ちたもの、あるいは副産物
地球環境問題
■市場の倫理的限界(ジョン・ティロール)
経済学にとっての自由市場:十分に競争的であれば、価格の押し下げ、生産コストの抑制、イノベーションの誘発、貿易の促進を通じて世帯の購買力を押し上げることができる。政府の資源配分にありがちな裁量的な意思決定やロビー活動やえこひいきから市民を守る働きもする。
しかし、いろいろ調整しないといけない。
反論:市場は万能ではないし、市場に出してはいけないものがたくさんある。友情、一流大学の入学資格、ノーベル賞、養子、成績、生殖能力、麻薬、兵役、投票権、環境汚染、臓器移植などは市場で取引されるべきではない。
→市場の倫理的限界
応用倫理の重要性
■公共哲学としての社会科学
「公共哲学」(public philosophy)
ロバート・N・ベラーとその共同研究者たちは、アメリカ人の個人主義を丹念に調査した『心の習慣』の付論のなかで「公共哲学としての社会科学」について述べている。
(1)同時に哲学的でも歴史的でも社会学的でもあるような創観的(synoptic)な見方。
(2)社会自身の自己理解あるいは自己解釈の一形態であり、社会に向けて鑑を掲げること。
(3)価値をあつかう。「こうした社会科学は、現在ばかりでなく過去もまた探ることによって、また『事実』と同じほどに『価値』にも目を向けることによって、定かには見えない連関を見出し、困難な問題を提示することができる。」
(4)それ自身が対話的なコミュニケーションの実践である。「公共哲学としての社会科学は、たんにその発見物が学者世界の外の集団や団体にも公共的に利用可能あるいは有用であるから『公共的』だというのではない。それが公衆を対話へと引き込むことを目指しているから『公共的』なのである。」
極度に専門分化した社会科学をそれはそれとして生かしながら総合し、
トータルに社会のあり方を考察し、
よく磨かれた鏡のように自分たちの社会を映しだし、
人びとの反省能力を高め、
人びとのあいだに合意形成の意思をもった対話を誘発する知識。
地球環境問題
応用倫理
テクノサイエンス
■公共社会学の場合(ビュラウォイ)
社会学のところを社会科学に置き換えて考える。
横軸 特性・アカデミック・アカデミック外
縦軸 道具的・反省的(再帰的)
4つのタイプ(ここでは社会学。一般化すると)
専門科学・政策科学
批判科学・公共科学
タイプごとの特性
知識(どういう知識か)
真理(どのような真理を求めるか)
正当性(なぜ認められているか)
真理(どのような真理を求めるか)
正当性(なぜ認められているか)
説明責任(だれに説明するか)
政治(取引のやり方)
病理形態
画像の表は、マイケル・ビュラウォイ(Michael Burawoy)による「公共社会学(Public Sociology)」に関する議論でよく引用される、社会学的知識の4類型。
社会学的知識の類型の精緻化
(Table 3. Elaborating the Types of Sociological Knowledge)
| 区分 | 項目 | 学問的 (Academic) | 学問外 (Extra-Academic) |
道具的 (Instrumental) | 類型 | 専門的社会学 (Professional Sociology) | 政策社会学 (Policy Sociology) |
| 知識 | 理論的/実証的 | 具体的 | |
| 真理 | 対応(実態との一致) | 実用的(プラグマティック) | |
| 正当性 | 科学的規範 | 有効性 | |
| 説明責任 | 同業者(ピア) | 依頼主(クライアント) | |
| 政治 | 専門職的自己利益 | 政策介入 | |
| 病理 | 自己言及性 | 隷属性 | |
再帰的 (Reflexive) | 類型 | 批判的社会学 (Critical Sociology) | 公共社会学 (Public Sociology) |
| 知識 | 基盤的 | コミュニケーション的 | |
| 真理 | 規範的 | 合意 | |
| 正当性 | 道徳的ビジョン | 関連性(レレバンス) | |
| 説明責任 | 批判的知識人 | 特定の公衆 | |
| 政治 | 内部討議 | 公共的対話 | |
| 病理 | 教条主義(ドグマティズム) | 一時的流行(迎合) |
道具的 (Instrumental) / 再帰的 (Reflexive): 知識が何かの手段(道具)として使われるか、知識そのものや前提を問い直す(再帰的)かという軸。
対応 (Correspondence): 「真理の対応説(真理は客観的事実と一致する)」
自己言及性 (Self-referentiality): 学問が内輪だけの話になり、外部との接点を失う状態を指す病理。
隷属性 (Servility): 政策社会学において、クライアント(資金提供者や政府)の言いなりになってしまう病理。
教条主義 (Dogmatism): 批判的社会学が、特定のイデオロギーに固執し排他的になる病理。
1/10が最終回






