社会科学入門2025後期07研究方法(1)公式統計から推論する:『自殺論』
総論編
研究方法編
研究方法(1)公式統計から推論する:自殺論
ポイント①統計的推論
ポイント②社会現象としての自殺
吉田拓郎「人間なんて」1972
半世紀後↓
YOASOBI「もしも命が描けたら」Official Music Video
しかし、自殺を賛美してはならない。
デュルケーム『自殺論』1897年
19世紀の自殺統計(1830年代〜)を分析して他の学説を批判する。
自殺の定義:死が、当人自身によってなされた積極的、消極的な行為から、直接、間接に生じる結果であり、当人がその結果の生じうることを予知していた場合。26
同一の社会における自殺の数はほぼ一定している。一般死亡率の方が変動が激しい。自殺率は社会集団を特徴付ける1つの指標。35
■自殺の原因に関する学説を批判する
(1)精神異常(精神病理的状態)説:自殺は精神異常の確実な一指標であるとする。しかし精神錯乱者の自殺には動機がない。あるいは想像上の動機しかない。しかし多くの自殺には動機がある。精神病とはかかわりのない自殺がたくさんあって、それらは熟慮されたものであり、その熟慮に入ってくる表象は幻覚的なものではない。60
(2)人種・遺伝説:そもそも人種って何。血ではなく文明による。遺伝だとすると自殺率の大きな男女差が説明できない。子どもの自殺は極めて少ない。成人にのみ発現する自殺傾向を遺伝のせいにはできない。
(3)気候と季節の気温説:しかし自殺が多いのは温和な地帯。自殺が最大値に達するのは冬でも秋でもなく、温和な季節。あらゆる季節を通じて自殺の大部分は昼間に行われる。昼間が社会生活の沸騰状態にある時間だから。
(4)模倣説:流行や慣行に従うとき、他人のやったことを反復しているが、それは「模倣の本能」なるものに拠るのでなく、そうすることが義務的であるか有益であると感じられるから。自殺の観念が模倣されるのではなく、まったく絶望の状態におかれ、死地に赴こうとしている集団全体によって(集合的に)形成される。自殺に(模倣の)中心があるわけではない。
■社会的原因による分類(自殺の推定動機は当てにならないし、自殺の方法も当てにならない)
(1)自己本位的自殺
・カトリックの国ぐに:スペイン、ポルトガル、イタリア:自殺が少ない
・プロテスタントの国ぐに:プロイセン、ザクセン、デンマーク:最大
・ユダヤ教徒:少ない(どこでも少数派)
▼なぜこうなるのか? ユダヤ教以外どの宗教も自殺を禁止しているのに。
・カトリック教徒は既成の信仰を無批判に受け入れがち。聖書の解釈も禁じられている。教権の階級組織。変化は嫌われる。→自殺が少ない
・これに対してプロテスタントは広範囲の自由検討が認められている。自らの信仰の創造者。喜びとともに苦痛も伴う反省。教会が強力に統合されていない。→自殺が多い
・ユダヤ教徒は周囲の敵意と闘う必要から異常に強力な連帯感。→自殺が少ない
▼宗教の崩壊が人びとの知識への要求を目覚めさせる。
・教育程度の高い人に自殺が多い。
・宗教は1つの社会である。
▼家族という社会が自殺への強力な予防剤である。家族が密であればあるほど、多ければ多いほど。
▼戦争の時には自殺は減る。なぜかというと、社会的激動が生じると党派精神や祖国愛や国民的信念などの集合的感情が、強固な社会的統合を実現させるから。自分のことなんかどうでもよくなる。
▼自殺は、個人の属している社会集団の統合の強さに反比例して増減する。
▼自己本位的自殺:常軌を逸した個人主義による自殺。個人は、個人自身だけでは自分の活動の十分な目標にならない。存在理由のない無用の者→無への恐怖
(2)集団本位的自殺
自己本位的自殺とは逆に、あまりに強く社会に統合されている場合も自殺が生じる。例えば未開社会。
・老人、病人の自殺
・夫の死のあとの妻の自殺
・首長の死に伴う臣下や家来の自殺
これらは自殺する義務が課せられているから。個人の人格が無に等しいとされる状況がある。
→(義務的)集団本位的自殺
生に執着しないことが偉大な徳とされる社会では自殺は褒め称えられ奨励される。
目標はあるが、生の外側にある。
現代においては軍隊において慢性化している。軍人の自殺傾向は一般市民の自殺傾向より非常に大きい。軍人としての適性が高い、比較的自由な立場に多い。精鋭部隊が多い。
(3)アノミー的自殺
経済的破綻だけでなく、繁栄をもたらす歓迎すべき機会でさえ、自殺が増える。つまり均衡が崩れるとき。社会的混乱のとき、社会は個人に対する規制を行使できなくなる。
そうすると、基準を失った人たちは何が正解なのかわからなくなる。そのため人びとは何に対しても見境なく欲望を向けるようになる。無規制状態。これを「アノミー」と呼ぶ。
アノミーが慢性的なのは商工業の世界。沸騰状態。際限のない目標。
「ゲームの規則に従って勝つ」のではなく「ゲームそのものに勝つ」へ。
人の活動が規制されなくなり、それによってかえって苦悩を背負わされていると感じることによる自殺。憤怒、苛立たしい疲労、狂気じみた焦燥。
「人が健全な規律に服している社会では、人は運命の与える打撃にも労せずして耐えることができるものである。自己を縛り、抑制することに慣れている人にとって、多少のよけいな窮屈さを自分に課すための努力くらいはさほど辛いものではない。それに反して、いっさいの制限が、それだけでいとわしいときには、さらにきびしい制限は、当然耐えがたいものと感じられる。」425
以上は、あくまでも19世紀フランスを中心としたヨーロッパの自殺統計の分析。
自殺率は社会現象。
公式統計を駆使して、ときには25000人分の調査原票に遡って調査。
アノミーは殺人などの犯罪にも関係しているのでアノミー論として展開。
全数調査は大変だから統計学が必要なんだ。→統計学的検定の発達
他方、ビッグデータによる全数調査の可能性。
日本の政府統計 e-Stat (https://www.e-stat.go.jp)
今日までそして明日から
(1972映画『旅の重さ』より/詞・曲・唄:よしだたくろう
■ところが1980年代以降「群発自殺」cluster suicide(精神医学的研究)
(1)連鎖自殺
(2)集団自殺
(3)自殺名所
デュルケムは連鎖しないと言ったが。
距離を取れ。距離化戦略
中間集団の弱体化
メディアの発達
卒論に備えて使えるようにしておくこと。
次回は研究方法(2)パネル調査(インフルエンサーを発見する)