こころとからだのリテラシー(身体文化論)2025前期11からだ編(4)障害とは何か
第11回 からだ編(4)障害とは何か
■障害の分類(日本の法律・制度に基づく)
①身体障害
視覚障害
聴覚・平衡機能障害
音声・言語・そしゃく機能障害
肢体不自由(上肢・下肢・体幹の障害、脳原性の運動機能障害など)
内部障害(心臓、腎臓、呼吸器、免疫機能などの障害)
②知的障害
知的機能の発達に遅れがあり、日常生活での援助が必要な状態。
③精神障害
精神疾患により、日常生活や社会生活に制約がある状態。
統合失調症
気分障害(うつ病、双極性障害など)
てんかん
高次脳機能障害(事故や病気による脳の損傷が原因)
依存症(薬物、アルコールなど)
発達障害:生まれつきの脳機能の発達の偏りによる障害。
自閉スペクトラム症(ASD):対人関係の困難、強いこだわりなど。
注意欠如・多動症(ADHD):不注意、多動性、衝動性。
学習障害(LD)/特異的学習症(SLD):「読む」「書く」「計算する」など特定の能力の習得や使用に困難がある。
④難病
原因不明で治療法が確立していない希少な疾患。
■障害
発生時期による分類
①先天的障害: 生まれつき、または周産期・乳幼児期早期までに生じる障害。
②中途障害(後天的障害): 人生の途上で、病気や事故などによって生じる障害。
③老化に伴う障害: 加齢による心身機能の低下が主な原因で、高齢期に生じる障害。
■可視性(見えやすさ)による分類
①見える障害: 車いすの使用、白杖、義肢・装具、麻痺による身体の動きの制約など、外見から障害があることが比較的分かりやすい状態。
②見えない・見えにくい障害: 内部障害、精神障害、発達障害、聴覚障害、高次脳機能障害、慢性的な痛みなど、外見からは障害があることが分かりにくく、周囲の理解を得にくいことがある状態。
■個人的な経験としての障害
環世界(ユクスキュル)すべての生き物は意味を構成する主体である。自分にとっての世界。主観的な世界としての身体。
当事者性
特徴のある身体
情報の少なさが特有の意味を生み出す?
▼「身体の個別性に向き合う」(伊藤亜紗2022論文)
身体は、私たちをこの世で唯一の存在にする、絶対的な原理である。
他方、医学・科学・社会制度は身体を一般化して扱う。
視覚障害の多様性
「晴眼者マイナス視覚」ではない。視覚障害者は、視覚以外の感覚を晴眼者とはちがう方法で使うことによって、視覚なしで成立する身体の使い方を実践している存在。
①先天的に全盲の人。「失った」という感覚がない。音のまま把握か触覚的情報に置き換えて把握。健常者ならどう振る舞うかを考えながら演じることがある。
②中途障害の人。空間を確認しながら行動。聴覚的情報を視覚的イメージに置き換えて把握。もともと晴眼者の視点を内面化している。タイミング、子ども時代か中年かでちがう。
③弱視の人。8-9割。視力が低いのか、視野が狭いのか、時間帯によって見にくいのか。バスに乗る。
④聴覚が優位な人。触覚が優位な人。顔面で感じる空気の流れ、足裏の感覚。コミュニケーションが優位な人(周囲の人に聞きながら行動する人)。
⑤視覚障害者も視覚イメージをもつ。
⑥高い頻度の他者との相互行為→社会的な身体知
盲導犬のハーネス、伴走。ズレをはらんだ相互行為ではお互いへの信頼が重要になる。
■私:障害があることによって感受性が変化するものだろうか。
Gemini:【最も重要な注意点】
「障害があるから感受性が豊かだ」と安易に一般化することは、新たなステレオタイプとなり、当事者を苦しめる危険性があります。「障害があるのに、そんなことも感じないのか」といった無言のプレッシャーになりかねません。
感受性は、障害の有無にかかわらず、究極的にはその人固有のものです。ある人は鋭敏になり、ある人はむしろ自分を守るために感情に蓋をすることもあるでしょう。
結論として、「障害があること」は、感覚処理のレベルから、社会との相互作用、そして自己の内面と向き合う経験まで、様々なレイヤーで、その人の感受性のあり方に深く影響を与えうる一つの重要な要素と言えます。それは、感受性をある方向に「変化させる」可能性を秘めていますが、その現れ方は千差万別であり、私たちはその多様性を尊重し、一般化せずに一人ひとりの世界のとらえ方として理解しようと努めることが大切です。
■障害者差別
私:障害者差別にはどのようなものがありますか。
Gemini:「障害者差別解消法」の考え方
1. 不当な差別的取扱い(直接的な差別)
これは、障害があるという理由だけで、正当な理由なく、サービスの提供を拒否したり、場所の利用を制限したり、不利な条件をつけたりする、最も分かりやすい意図的な差別です。法律で明確に禁止されています。
具体例:
車いすを利用していることを理由に、レストランへの入店を断る。
障害があることを伝えたら、「何かあった時に責任が取れないから」という曖昧な理由で、アパートの契約を拒否される。
盲導犬を連れていることを理由に、ホテルの宿泊を断る。
採用面接で、能力や適性を評価することなく、障害があるというだけで不採用にする。
2. 合理的配慮の不提供(間接的な差別)
これは、障害のある人から、社会的なバリアを取り除くために何らかの配慮を求める意思の表明があった際に、負担が重すぎない範囲で、必要な対応をしないことを指します。何もしない「不作為」が差別に当たります。
2024年4月から、行政機関だけでなく、民間事業者においても法的義務となりました。
具体例:
聴覚障害のある人から筆談での対応をお願いされたのに、「時間がないから」と断る。
知的障害のある人に、分かりやすい言葉で説明したり、絵や図を使ったりする配慮をせず、早口な専門用語だけで説明して手続きを進めてしまう。
車いすの人が数段の段差を前に困っている際、手伝いを求められたり、携帯スロープの利用をお願いされたりしたのに、「面倒だから」と対応しない。
視覚障害のある人に、書類の内容を読み上げて説明するのを拒否する。
3. ハラスメント(精神的な差別)
障害に関連した、相手の尊厳を傷つける言動や、嫌がらせ、いじめを指します。障害を理由とした侮辱や、精神的な苦痛を与える行為全般が含まれます。
具体例:
発達障害の特性(こだわり、コミュニケーションの取り方など)をからかったり、真似したりする。
精神障害のある人に対して、「危ない」「何を考えているか分からない」といった偏見に基づいた言葉を浴びせる。
職場で、障害のある同僚だけを無視したり、重要な情報から外したりする。
「障害者のくせに生意気だ」などの暴言を吐く。
4. 構造的・文化的な差別(社会に埋め込まれた差別)
これは最も根深く、見えにくい差別です。社会の制度、法律、文化、価値観そのものが、無意識のうちに障害のない「健常者」を基準(スタンダード)として作られているために、結果として障害のある人々が社会から排除されてしまう状況を指します。
これは、マイケル・オリバーが指摘した「社会モデル」における、**社会の側が作り出している「障害(disability)」**そのものです。
具体例:
物理的なバリア: 階段しかない駅や公共施設、狭くて車いすが通れない歩道。
制度的なバリア: 「週5日・フルタイム」といった画一的な働き方しか想定されておらず、体調に波があったり、通院が必要だったりする人が働き続けるのが困難な雇用制度。
文化・情報的なバリア:
メディアが障害者を「かわいそうで無力な人」か、逆に「困難を乗り越えた超人」という両極端なステレオタイプで描き、ありのままの多様な個人として描かないこと。
音声案内や字幕、手話通訳のない講演会や映像コンテンツ。
障害を「個人の不幸」「本人の努力不足」と捉え、社会全体の課題として考えない風潮。
これらの差別は、個人の悪意から生まれるものだけでなく、無知や無関心、そして社会に根付いた「当たり前」を疑わないことから生じます。差別の解消には、法律を守ることはもちろん、私たち一人ひとりが多様な存在を前提とした社会を構想する想像力が求められます。
アーヴィン・ゴッフマン『スティグマの社会学』1963
社会的な「烙印(らくいん)」を押された人々が、いかにして自らのアイデンティティを管理し、他者と関わっているのか。
①スティグマとは、ある個人が持つ属性と、社会がその人に期待する属性との間に「ずれ」がある場合に生じる、社会的に望ましくないとされる「しるし(烙印)」。
②その属性自体(例:身体の障害、特定の人種)が本質的に悪いのではなく、社会的な文脈の中でネガティブな意味を与えられることで生まれる。③スティグマを持つとは、社会的にアイデンティティが「汚されている」と見なされ、その「汚れ」をいかに管理して生きていくかという問題に直面すること。
④「信用」をめぐるアイデンティティ管理
・信用を失った者 (the discredited):スティグマが外見から明らかであるか、すでに関わる人々に知られている状態の人。(例:車いすの使用者、顔に大きな傷がある人)課題は「緊張の管理」。どうすれば「正常者」との間の気まずさや緊張を和らげ、円滑なコミュニケーションを築けるか。
・信用を失う可能性のある者:スティグマが外見からは分からず、まだ他者に知られていない状態の人。(例:隠している持病、犯罪歴、マイノリティとしての出自など)。課題は「情報の管理」。「隠し通す」のか、それとも「打ち明ける」のか、という戦略的な選択と、それがいつ発覚するかという絶え間ない不安に直面する。
⑤スティグマを持つ人の戦略
隠蔽(Passing): スティグマを隠し、「正常者」として社会を渡り歩くこと。
カバリング(Covering): スティグマ自体は明らかでも、それが相互作用の場で目立たないように、様々な工夫をして覆い隠そうとすること(例:吃音のある人が、どもりそうな言葉を避けて話す)。
暴露のコントロール: 誰に、いつ、どこで、どのようにスティグマを打ち明けるかを戦略的に判断する。
仲間内への退却: 「事情通」や同じスティグマを持つ「仲間」とだけ付き合い、傷つく可能性のある「正常者」との接触を避ける。
⑥スティグマは個人の属性ではなく、社会的な相互作用の中で常に生成・再生産される「関係性の問題」である。
↓内田良「スティグマの感情」2002より
■当事者の反応としてのマチズモ
市川沙央『ハンチバック』2023
健常者優位主義(マチズモ)
■障害者運動から障害学へ(石川准「ディスアビリティの政治学」2000)
①財と意思決定と存在価値の分配システム
労働→生産→分配
工場のような均一的な労働
これに対して
必要→配分
ディスアビリティの社会的構築:福祉国家が提供する福祉システムの受給者を限定し管理する必要。→線引き問題
■障害の社会モデル
WHO「世界障害分類」1980
①インペアメント:心理的・生理的・解剖的構造あるいは機能の欠損または異常。
②ディスアビリティ:①によってもたらされた、人間として正常と考えられる活動を遂行する能力の制限あるいは欠如。
③ハンディキャップ:①と②によってもたらされた、年齢・性・社会的文化的条件相応の正常な役割の達成を制限し阻害する不利。
↓
しかし障害者団体は拒絶。
障害者の問題の原因は機能障害ではなく社会的障壁・社会的剥奪にある。
ディスアビリティは直接的間接的差別によってもたらされている機会の喪失と制限。
→人を無力化する社会的環境の変革へ
障害の社会モデル(オリバー)
個人モデル、医療モデルから社会モデルへ
■社会モデルの問題
①帰納的損傷の経験を軽視しているのではないか。
②障害者とラベルづけされるのを望んでいない。障害のスティグマ化。
③機能的損傷そのものによってもたらされた障害を考慮に入れること。
■アクセシビリティと合理的配慮
今後の予定
12回 からだ編(5)ジェンダー
13回 からだ編(6)身体の政治
14回 からだ編(7)メディアとしての身体



