こころとからだのリテラシー(身体文化論)2025年前期05こころ編(3)精神医学

第5回 こころ編(3)精神医学
精神科や心療内科で扱う病気の世界
(心の病についての2つの臨床科学:精神分析と精神医学)
臨床とは、目の前の患者の心身の状態を改善を目的とする活動のことで、基本的には科学的知識を応用する。



■精神疾患の定義(DSM-5)
(1)精神疾患とは、精神機能の基盤となる心理学的、生物学的、または発達過程の機能不全を反映する個人の認知、情動制御、または行動における臨床的に意味のある障害によって特徴づけられる症候群である。
(2)精神疾患は通常、社会的、職業的、または他の重要な活動における意味のある苦痛または機能低下と関連する。
(3)よくあるストレス因や喪失、例えば、愛する者との死別に対する予測可能な、もしくは文化的に許容された反応は精神疾患ではない。
(4)社会的に逸脱した行動(例:政治的、宗教的、性的に)や、主として個人と社会との間の葛藤も、上記のようにその逸脱や葛藤が個人の機能不全の結果でなければ精神疾患ではない。

サンプル
 Aoi

■大きな分類(最新版DSM-5-trより)


マニュアルによって診断し、薬物療法を中心に治療する。
中高生向けの新書。心配な人はここから。


ここでは次の本に準拠して説明する。一部はDSM-5-TRで補充、

①知的能力障害:気分の波、てんかんの合併、精神病エピソード(幻覚や妄想)が合併しやすい。環境の変化に敏感。特殊な才能を持つ場合もある。

②自閉スペクトラム症:スペクトラムとは連続体。社会性・対人性の障害。言語やコミュニケーションの障害。興味の限局、こだわりなど同じことを何度も繰り返す。このうち知的障害のないものをアスペルガー障害と呼ぶ。これは男性が多い(8:1)

③注意欠陥・多動症:不注意、多動性、衝動性。12歳より前に発症。ADHD。成人ADHDの症状として、不全感、抑うつ感、力が出し切れない感じ、計画や準備が苦手、物事を先送りする、集中力にムラがある、直感力と創造性、気分の変わりやすさ、衝動性、不安。

④統合失調症スペクトラム障害:自然な自明性の喪失による疎外感→生きる意味がわからなくなる。焦燥感。強迫症状(頻繁な手洗いなど)と被害念慮。

⑤抑うつ症群:抑うつ気分と喜び興味の消失(アンヘドニア)が2週間つづく。必ずしも几帳面な性格だからなるわけではない。

⑥不安神経症:愛着ある人との分離不安。社交不安。パニック症。広場恐怖症。

⑦強迫症・強迫性パーソナリティ障害:強迫観念と強迫行為(繰り返しの行動または心の中の行為)。身体醜形症、ためこみ症、抜毛症、皮膚むしり症など。

⑧身体症状症・転換性障害:身体症状に対する過度な思考や感情。病気不安症。

⑨拒食症・摂食障害:制限型と排泄型。

⑩物質関連症:いわゆる依存症、アルコール依存、カフェイン依存、大麻。中毒と離脱。

⑪神経認知障害:アルツハイマー病、仮性認知症。慢性あるいは進行性の病的な記憶力低下。意識障害は伴わない。行動の解体(失行)、認識の障害(失認)、実行機能の障害、言語の障害(失語)を伴う。

⑫認知症:複雑性注意(複数刺激での困難、新情報を保持できない、暗算ができない)、実行機能(複雑な計画を放棄する、意思決定を他者に頼る)、学習と記憶(同じことを何度も言う、リストや予定が覚えられない)、言語(あれ、名前を忘れる)、知覚運動(習熟しているはずの行動ができない、道具や運転)、社会的認知(社会規範に無神経になる)。

⑬境界性パーソナリティ障害:しばしば適応障害と診断される。その人の属する文化から期待されるものより著しく偏った内的体験および行動の持続的様式。この様式は認知、感情性、対人関係機能、衝動の制御のうち2つ以上の領域に現れる。

⑭双極症:躁エピソード。

注意事項
▼診断には高い専門性が必要なので、かんたんに決めつけないこと。→素人判断が差別につながる。
▼適応障害など、その人が置かれた社会的状況の方に問題がある場合を考慮すべき。ブラック企業。→社会の問題。
▼身体疾患に伴って生じる精神症状である可能性。→生命の問題。
▼過剰な薬物療法。→治療の困難。薬に対する忌避。
▼2022年のDSM-5-TRでdisorder(s)の訳が「障害」から「症」に変更された。
▼精神疾患と生きづらさの区別。自分を知る、他人を理解する、偏見を無くす。
▼二分法ではなくスペクトラム